二ホンミツバチのはちみつについて
ニホンミツバチから採れるはちみつは、その希少性と独特の風味から多くの人々を魅了しています。
この記事では、ニホンミツバチの生態やセイヨウミツバチとの違い、そして彼らが作り出す特別な蜂蜜について詳しく解説します。
趣味で養蜂を始めてみたい方にも役立つ、飼育の基本から注意点までを網羅的にお伝えします。
そもそもニホンミツバチとは?日本の自然に根付く在来種
ニホンミツバチとは、古くから日本に生息する在来種のミツバチです。
主に野生の状態で、樹の洞や家屋の床下などに巣を作り生活しています。
日本の多様な自然環境に適応しており、様々な植物の受粉を助けることで生態系において重要な役割を担っています。

近年、玉川大学などの研究機関によってそのユニークな生態や行動に関する研究が進められ、日本ミツバチの価値が再認識されています。
野生ならではのたくましさと、日本の気候風土に根付いた性質が大きな特徴です。
天敵を熱で倒す「熱殺蜂球」など独自の生態
ニホンミツバチの生態で最も特徴的なのが、天敵であるオオスズメバチやキイロスズメバチを撃退する熱殺蜂球です。
偵察に来たスズメバチを数百匹の働き蜂が球状に取り囲み、翅を震わせて内部の温度を46℃前後まで上昇させます。
スズメバチは高温に弱いため、この熱によって蒸し殺されてしまいます。

ニホンミツバチはスズメバチよりも熱に強い耐性を持っているため、この防御行動が可能です。
群れは一匹の女王蜂が卵を産み、多数の働き蜂、そして繁殖期に現れる少数の雄で構成されています。
働き蜂は口から口へ蜜を運び、短い一生を群れのために捧げます。
巣の環境が悪化すると引っ越す「逃去」という習性
ニホンミツバチには、巣の環境が悪化すると群れ全体で巣を捨てて引っ越す「逃去」という習性があります。
これは巣分かれである「分蜂」とは異なり、巣の存続が危うくなった際の緊急避難的な行動です。
主な原因としては、アカリンダニやヘギイタダニといった寄生虫の蔓延、蜜や花粉の不足、巣箱の環境悪化などが挙げられます。

特に、越冬を控えた10月から11月にかけて逃去が起こると、群れの存続は非常に厳しくなります。
ニホンミツバチにはダニを駆除するための有効な薬がないため、飼育環境を清潔に保つことが逃去を防ぐ上で重要な問題となります。
セイヨウミツバチとニホンミツバチの主な違いを比較
日本の養蜂で主に飼育されているのはセイヨウミツバチですが、在来種であるニホンミツバチとは多くの違いがあります。
見た目や性格はもちろん、巣の作り方や蜜を集める花の傾向など、その性質は大きく異なります。
ここでは、セイヨウミツバチとニホンミツバチの主な違いを比較し、それぞれの特徴を解説します。
黒っぽく小柄な見た目と温厚な性格
ニホンミツバチは、セイヨウミツバチに比べて全体的に黒っぽく、サイズも一回り小さいのが特徴です。
その小柄で丸みを帯びた姿から「かわいい」と表現されることもあります。
性格は非常に温厚で、巣に大きな刺激を与えない限り、自ら人を攻撃してくることはほとんどありません。
このおとなしい性質は、趣味で飼育する人々にとって大きな魅力の一つです。
一方、セイヨウミツバチは体が大きく黄色みが強い色をしており、ニホンミツバチよりも攻撃性が高い蜂として知られています。
巣の作り方や蜜を集める花の種類の違い
巣の作り方にも明確な違いがあります。
セイヨウミツバチの養蜂では、管理しやすい「巣枠式巣箱」を使用し、蜂に人工の巣礎を与えて規則正しい巣を作らせます。

一方、ニホンミツバチの巣は、巣枠を用いず自然な形で巣を作らせる「重箱式巣箱」が主流です。
また、蜜を集める花の嗜好も異なります。
セイヨウミツバチが特定の花から集中的に蜜を集めるのに対し、ニホンミツバチは菜の花や梅、野生のランなど、地域に咲く様々な種類の花から少しずつ蜜と花粉団子を集める「百花蜜」が基本となります。
ニホンミツバチの蜂蜜「百花蜜」が持つ特別な魅力
ニホンミツバチが集めた蜂蜜は「百花蜜」と呼ばれ、その名の通り、四季折々の様々な花から集められた蜜が混ざり合っています。
特定の単一の花から採れる蜂蜜とは異なり、複雑で奥深い味わいが特徴です。
栄養価も高く、地域の自然が凝縮された特別な食べ物として珍重されています。
年に一度しか採蜜できない希少性の高さ
ニホンミツバチの蜂蜜が希少とされる最大の理由は、採蜜できる回数が極端に少ない点にあります。
ニホンミツバチは蜜を蓄えるペースが緩やかで、飼育下であっても採蜜は秋の年1回、多くても2回が限界です。

また、セイヨウミツバチのように蜜源を求めて巣箱を移動させるような飼育方法はとられていないため、一群から採れる蜜の量もごくわずかです。
このように大量生産ができないため、市場に出回る量は限られ、その価値を高めています。
四季折々の花から集めた奥深く豊かな風味
百花蜜の魅力は、その複雑で豊かな風味にあります。
春の桜や梅、夏の様々な木々の花、秋の草花など、ニホンミツバチが訪れた多種多様な花の蜜がブレンドされることで、口の中に広がる香りと味わいは毎年異なります。
採蜜の際には、蜜だけでなく花粉や蜜蝋、ローヤルゼリーなども微量に含まれることがあり、それがさらに風味に奥行きを与えています。
季節の移ろいや自然の恵みをそのまま感じられるのが、ニホンミツバチの蜂蜜ならではの醍醐味です。
採れる場所や年によって味わいが変わる一期一会の蜜
ニホンミツバチの蜂蜜は、採れた場所の植生やその年の天候によって風味が大きく変わります。
例えば、京都の山間部で採れた蜜と九州の沿岸部で採れた蜜では、蜂が蜜源とする花の種類が全く異なるため、香りや味わいも別物になります。
同じ場所であっても、標高の違いやその年の花の咲き具合によって風味が変化するため、毎年同じ味の蜜が採れるとは限りません。
東京の郊外で採れた蜜でさえ、その土地ならではの個性を持ちます。
まさに「一期一会」の味わいを楽しめるのが、この蜂蜜の最大の魅力です。
ニホンミツバチの蜂蜜の価格相場と上手な選び方
ニホンミツバチの蜂蜜は希少性が高いため、一般的な蜂蜜よりも高価で取引されます。
しかし、その価格に見合うだけの特別な価値があります。
購入する際は、価格の理由を理解し、信頼できる養蜂家や販売者から本物を見極めることが重要です。
上手な選び方を知り、その価値を最大限に楽しみましょう。
一般的な蜂蜜より高価になる理由とは
価格が高価になる主な理由は、採蜜量が極端に少ないことです。
ニホンミツバチは年に1〜2回しか採蜜できず、一群から得られる量もセイヨウミツバチの数分の一です。
また、採蜜方法にも理由があります。
巣を遠心分離機にかけるセイヨウミツバチと違い、ニホンミツバチでは巣を砕いて自然に垂れ落ちる蜜を集める「たれ蜜」という方法が主流です。

この方法は時間がかかり非効率ですが、不純物が少なく純粋な蜜が得られます。
こうした手間と希少性が価格に反映されています。
信頼できる生産者から本物の蜂蜜を購入するポイント
本物のニホンミツバチの蜂蜜を購入するためには、いくつかのポイントがあります。
まず、商品のラベルを確認し、「品名:日本みつばちの蜂蜜」「原材料名:はちみつ(国産)」といった表示があるかを見ます。
採蜜地や養蜂家の名前が明記されているものは信頼性が高いです。
また、ニホンミツバチは飼育が難しく逃げやすいため、安定して供給している生産者は信頼できると言えます。
道の駅や信頼できる養蜂家の直販サイト、専門店などで、商品の背景を確かめながら購入することをおすすめします。
趣味で始めるニホンミツバチの飼育(養蜂)入門
ニホンミツバチの飼育(養蜂)は、自然との触れ合いや自家製はちみつの収穫を楽しめる魅力的な趣味です。
セイヨウミツバチの飼育とは異なる知識や準備が必要ですが、ポイントを押さえれば初心者でも挑戦できます。
Youtubeで「kウイング」や「るな」といったチャンネルが飼育方法を発信しており、情報収集に役立ちます。
巣箱のレンタルサービスや、採蜜が容易なフローハイブといった道具もありますが、まずは基本的な飼育方法を学ぶことから始めましょう。
春の分蜂シーズンが蜂を捕獲する絶好のチャンス
野生のニホンミツバチを飼うには、まず蜂の群れを捕獲する必要があります。
その絶好の機会となるのが、春の分蜂シーズンです。
分蜂とは、巣の中の働き蜂が増え、新しい女王蜂が生まれると、古い女王蜂が群れの約半数を引き連れて新しい巣を探しに旅立つ現象です。
日本では地域によりますが、おおむね桜が咲く4月頃にピークを迎えます。
この時期に、蜂が好みそうな場所に巣箱を設置しておくことで、自然に蜂の群れが入居するのを待ちます。
「重箱式巣箱」の設置と管理方法の基本
ニホンミツバチの飼育には、「重箱式巣箱」が広く使われます。
これは、同じ大きさの木枠(継箱)を重ねていく構造の巣箱です。
蜂は上から下へと巣を作っていくため、蜜が溜まった上段の箱を切り取って採蜜します。

巣箱を設置する際は、分蜂した群れを誘引するために、ランの一種であるキンリョウヘンや「待ち箱ルアー」と呼ばれる誘引剤を近くに置くと効果的です。
設置場所は、直射日光や雨が直接当たらず、静かで風通しの良い場所を選びます。
巣の出入り口である巣門の向きや、巣が重みで落ちる「巣落ち」を防ぐ工夫、屋根の設置も重要です。
最大の天敵であるスズメバチから群れを守る対策
ニホンミツバチの飼育において最大の課題は、天敵であるスズメバチからの防衛です。
特に夏から秋にかけては、オオスズメバチが巣を襲い、群れを全滅させてしまう危険性が高まります。
対策として、巣箱の入口にスズメバチが入れない大きさの網を取り付けたり、巣箱の周辺に粘着シートやスズメバチ捕獲器を設置したりする方法が有効です。
また、地域によっては熊対策も必要になる場合があります。
夏の暑さ対策として巣箱の風通しを良くするなど、年間を通じて群れを守るための管理が欠かせません。
飼育を始める前に必要な「飼育届」の提出を忘れずに
ニホンミツバチを飼育する場合、趣味の小規模な養蜂であっても、養蜂振興法に基づき、飼育場所を管轄する都道府県への「飼育届」の提出が義務付けられています。
これは、蜂の伝染病の蔓延を防ぎ、地域の養蜂業を保護するために必要な手続きです。
届出を怠ると罰則の対象となる場合があるため、飼育を始める前に必ず最寄りの自治体や家畜保健衛生所に問い合わせ、必要な書類を確認して提出しましょう。
ニホンミツバチに関するよくある質問
ここでは、ニホンミツバチの飼育や生態に関してよく寄せられる質問にお答えします。
ニホンミツバチは人を刺しますか?性格は温厚?
基本的におとなしく、自ら人を刺すことは少ないです。
しかし、巣を刺激したり、蜂を直接掴んだりすると防衛のために刺すことがあります。
ニホンミツバチにむやみに近づきすぎないことが大切です。
ニホンミツバチの蜂蜜はなぜ値段が高いのですか?
飼育が難しく採蜜量が少ないためです。
ニホンミツバチは年に1〜2回しか採蜜できず、量もセイヨウミツバチより限られます。
この希少性が価格に反映されるため、一般的な蜂蜜よりも高価になります。
初心者でもニホンミツバチの飼育は可能ですか?
はい、可能です。
ただし野生の群れを捕獲する必要があり、セイヨウミツバチより難しい側面もあります。
ニホンミツバチを飼う際は、書籍や地域の養蜂家から知識を得ることが成功の鍵です。
まとめ
ニホンミツバチは、日本の自然環境に根付いた在来種であり、その生態や作り出す蜂蜜には多くの魅力があります。
彼らが作る百花蜜は、年に一度しか採れない希少性と、採れる場所や年によって味わいが変わる奥深さが特徴です。
飼育はセイヨウミツバチと異なる知識が必要ですが、分蜂の習性を利用した捕獲や重箱式巣箱での管理など、基本的なポイントを押さえることで趣味として楽しむことが可能です。
飼育を始める際は、天敵対策や飼育届の提出といったルールを必ず守ることが求められます。




